「再生可能エネルギー」についてのお問い合わせがありましたので、改めて「余市町再生可能エネルギービジョン」について、ポイントを押さえながらまとめてみます。
「なぜ必要なのか」
「余市にどんな力があるのか」
「私たちの生活がどう良くなるのか」
「余市町再生可能エネルギービジョン」⤵️
https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/chousei/plan/files/energy_vision_all_2024_03.pdf
余市町再生可能エネルギービジョン (改訂版の内容要約) (P1〜)
余市町再生可能エネルギービジョン改定の背景
エネルギー価格の高騰や地球温暖化対策を背景に、余市町は令和4年に「再生可能エネルギービジョン」を策定しました。
災害時の強靱性や地域産業の発展、低炭素社会の実現を目指すものです。
今回の改定では、温室効果ガス削減を新たに重視し、「省エネ」と「再エネ活用」による対策を強化します。
また、温室効果ガス排出量の現状や将来予測を検討し、「第5次総合計画」や環境関連計画と整合を図りながら推進していきます。
要は…
余市は“自然の力”で、今よりもっと強くなれる”。
そこを進めていくための計画です。
余市が1年間に使う電気のおよそ40万MWh(メガワットアワー)に対して、太陽・風・水・地中熱などでつくれる見込みは約153万MWhあります。
つまり、使っている分を大きく上回る可能性があるということです。
この力を、防災・家計・仕事の3つに生かすのが、このビジョンの目的です。
- ポイントを一言で:
余市は、使っている電気よりも多い量を作れる可能性がある。 - どんな良いことが?:
停電に強くなる。
光熱費の安定につながる。
しごとや学びも広がる。
余市町再生可能エネルギービジョン改定の目的
再生可能エネルギーは地球温暖化防止だけでなく、災害時のエネルギー確保や地域経済の活性化にもつながります。
余市町では、自立・分散型の供給システムを構築し、町内の資源を活用することで、環境負荷を減らしながら地域産業の発展を目指します。
改定版の主な目的は以下の4点です。
- 町内の自然・農産資源を調査し、活用可能な再生可能エネルギーを明らかにする。
- 町内の温室効果ガス排出量と将来の推移を把握・検討する。
- 地域資源と産業を組み合わせ、災害時の供給や排出削減につながる導入計画を策定する。
- 「再生可能エネルギー地産地消推進重点プロジェクト」を検討・推進する。
なぜ今なの?――停電の教訓と、物価・気候の変化
2018年の胆振東部地震で、北海道は大きな停電を経験しました。
電気が止まると、明かりや暖房だけでなく、病院や水道、通信にも影響が出ます。
物価上昇や気候変動も重なり、電気を“遠くから買う”だけに頼らない仕組みが必要になりました。
そこで余市は、自立・分散型――町の中でつくり、ためて、融通(ゆうづう)できるエネルギーの形を目指します。
余市町の再生可能エネルギーの賦存量と導入ポテンシャル (P30〜)
どれだけ“ある”のかを、同じものさしで
再生可能エネルギーを見積もるときは、三つの段階で考えます。
賦存量=理論的に(かつ最低限の条件を満たして)利用可能な量、
導入ポテンシャル=地形・法規制・土地利用など現実の制約を差し引いた量、
事業性を考慮したポテンシャル=費用対効果まで見た実装可能量です。
本ビジョンでは、主に賦存量と導入ポテンシャルを用いて、余市の“自然の力”を同じものさし(kW・kWh、TJ)で並べました。
合計すると、町の消費を大きく上回る力
導入ポテンシャルを合計すると、
電力は1,537,790MWh/年、
熱は1,091TJ/年(=約303,000MWh/年)。
余市の年間消費約400,394MWhを大きく上回ります。
もちろん、実際に活用するには採算性や合意形成が欠かせませんが、
**“まかなえるだけの力がある”**ことが数字ではっきり示されています。
資源ごとの「特徴と規模」をひと目で
太陽光(建物・土地)
屋根や施設の上に載せる建物系は約106,000MWh/年、畑や未利用地などの土地系は約473,000MWh/年。
気象に左右されるため、蓄電池との組み合わせが鍵になります。
陸上風力
丘陵部などでの発電ポテンシャルは約955,000MWh/年。
大きな力ですが、景観・自然環境・生活環境への配慮、そして系統接続の検討を並行して進めます。
洋上風力
海上は風が安定しており大規模化に向きますが、工事・保守費用、漁業との協調、航路や生態系配慮など課題も多い分野です。
現段階ではポテンシャルマップの提示にとどめています。
中小水力
川や用水路の流れを生かす小さな発電で、余市では約430MWh/年を見込みます。
水利や法手続き、環境への配慮を丁寧に整えながら進めます。
地熱(低温バイナリー)
比較的低い温度の地熱を使って発電する方式で、約3,360MWh/年。
温泉や公園など既存の土地利用との調整、掘削計画の慎重な検討が必要です。
地中熱(熱利用)
地面の下の安定した温度を冷暖房に活用。
導入ポテンシャルは**898TJ/年(=約249,000MWh/年)**と大きく、
新設の道の駅など公共施設での活用に向きます。
初期投資の設計工夫がポイントです。
太陽熱(熱利用)
お湯づくりや暖房に直接使える太陽の熱。
**193TJ/年(=約54,000MWh/年)**のポテンシャル。
貯湯・断熱や凍結対策を前提に、素直に省エネ効果が出ます。
バイオマス(木質・畜産・農業・水産)
地域の“もったいない”をエネルギーに。
- 木質:
森林由来の賦存量は約153,535GJ/年(熱)。
収集・運搬の効率化が鍵。 - 畜産:
ふん尿由来で約3,461GJ/年(=約961MWh/年)。
プラント整備と物流設計が論点。 - 農業:
作物残さで約1,199GJ/年(=約333MWh/年)。
発生時期に偏りがあるため保管や他資源との組合せを検討。 - 水産:
残さで約2,929GJ/年(=約814MWh/年)。
腐敗しやすく日々の収集が前提。
雪氷冷熱(賦存量の目安)
冬の雪や氷をため、夏の冷房や食品・ワインの冷却に使う知恵です。
**賦存量の概算は約5,300TJ/年(=約1,472,000MWh/年)**と非常に大きい一方、
導入ポテンシャルは除雪で実際に集められる量などの前提整理が必要です。
倉庫(雪氷庫)の用地と初期費用が主な課題になります。
活用のコツ――“三点同時”で現実解に
ポテンシャルが大きい資源ほど、系統(電線につなげる条件)・用地と環境配慮・事業性の三点を同時に設計することが成功の近道です。
太陽光は蓄電・熱利用と組み合わせ、風力は立地と合意形成を丁寧に。
地中熱や太陽熱は公共施設や福祉・観光拠点での安定運用に向きます。
バイオマスは**“集める・使う”の物流設計が要です。
数字に裏づけられた余市の強みを、暮らし・防災・産業の具体的な現場**へ落とし込んでいきます。
二酸化炭素排出量の将来予測 (P50〜)
後志の将来気候と余市への影響
地球のあたたまり方しだいで、余市の毎日はだいぶ変わります。
国の研究にもとづく後志(しりべし)地方の予測では——
- みんなでがんばって世界の平均気温の上昇を約2℃におさえられた場合でも、
年平均気温は約+1.4℃。 - ほとんど対策をしないで約4℃上がってしまう道すじだと、約+4.7℃。
この変化は、農業(果樹やワインぶどう、病害虫)、水産(魚の回遊)、自然や川・海の生きもの、洪水や土砂災害、熱中症、観光など、くらしのあちこちに影響します。
だからこそ、
- 排出を減らす(緩和)と、
- 変化にうまく備える(適応)、
この二つを同時に進めるのが大切です。
まとめ:
温暖化の進み方で、雨・雪・暑さ寒さが大きく変わる。
減らすことと備えることをセットで。
適応の基本方針
余市は、分野ごとに具体的な備えを進めます。
農業は天気に合わせた栽培や排水対策、
林業は適切な森林整備、
水産は回遊の変化に合わせた漁場づくり。
水環境は水利施設の維持更新や保安林の働きを高め、
自然は鳥獣被害対策。
防災は危険箇所の把握・ハザードマップ更新・避難所の非常電源の確保、
健康は熱中症の注意喚起——
道具(ハード)と仕組み(ソフト)を組み合わせて、暮らしを守ります。
まとめ:
変化はゼロにできない。
準備しておけば、被害は小さく、回復は早くできる。
二酸化炭素の将来予測――3つの道すじをくらべる
余市の排出は、2013年度 162,309t-CO₂ → 2020年度 127,193t-CO₂へと減ってきました。
これから先を3つの道すじで考えます。
- BAU(今のまま)
特別な新対策はしない想定。
**2050年に2013年比で“約26%減”**までは行けるけれど、目標には足りない。 - 国・道と同じレベルでがんばる
省エネや電化を地域でも実行。
2030年“約44%減”/2050年“約78%減”。
家・お店・工場・車それぞれの努力が土台に。 - 再エネを最大限いかす
余市の自然の力をめいっぱい活用できたら、**2050年“ほぼ100%減”**も理論上は可能。
ただし、
・事業として成り立つか(お金)
・場所や環境の配慮
・電線につなぐ条件
など、現実の壁を一つずつ超える前提です。
まとめ:
現実的に積み上げれば▲78%、
**条件がそろえば“ほぼゼロ”**も見える。
削減の基本設計(合算アプローチ)
一気にジャンプするのではなく、足し算で着実に前へ進みます。
余市の将来の排出量は、次の三つの減り方の合計で考えます。
① みんなのくらし・しごとの省エネと電化(国・道と同じレベル)
家電の買い替えで省エネ型を選ぶ、
建物の断熱・空調更新、
エコドライブ、
可能なところから電気の脱炭素化へ。
② 余市らしい“重点プロジェクト”の上乗せ
営農ソーラー、
道の駅×太陽光×地中熱、
マイクログリッド、
温泉の排湯熱、
小水力、
メタン発酵など、
地域の強みでコツコツ積み増す。
③ 森の力(CO₂吸収)
再造林や適切な手入れで、吸ってくれるCO₂を守り、増やす。
まとめ:
基礎(省エネ・電化)+②余市のプロジェクト+③森の吸収=目標へ近づく道。
重点プロジェクトの検討 (P60〜)
1) 畑の上で電気もつくる――営農型太陽光(ソーラーシェアリング)
ぶどう畑や果樹園の上にパネルを設置して、農業と発電を両立させる取り組みです。
収穫や作業のじゃまをしない設計にし、停電時は非常用の電源にもなります。
2) 新しい道の駅を“エネルギーの見本”に
余市IC近くに整備予定の新しい道の駅に、屋根・駐車場の太陽光と地中熱ヒートポンプを導入して、平時は省エネ、非常時は地域の拠点になる施設を目指します。
来訪者に余市の再エネの今を伝える発信基地にも。
3) みんなで助け合う電気のネットワーク――マイクログリッド
近くの建物どうしをつないで、つくった電気を融通する仕組みです。
学校・庁舎・病院・商業施設などが協力すると、停電時の面での強さが生まれます。
4) 温泉の“のこり熱”をムダにしない
温泉施設からの排湯(はいとう)に残る熱を、暖房や給湯に再利用。
燃料使用を減らし、施設の魅力も高めます。
5) 小さな川でも、こつこつ発電――小水力
大きなダムではなく、流れや落差のある地点を見つけて小さく発電。
農業施設や街灯、公民館などの電源に役立て、災害時の非常用電源としても期待します。
6) “もったいない”をエネルギーに――メタン発酵
食品・水産加工・ワインづくりなどの残さを集め、メタンガスで発電・熱利用。
原料の集め方や使い先を丁寧に設計し、将来の有力な選択肢として検討を進めます。
まとめ
計画は内容も用語も幅広く、少しとっつきにくいものです。
この記事では、そんな「余市町再生可能エネルギービジョン」を、むずかしい言葉をできるだけかみくだき、大事なところだけをやさしくお伝えしました。
ポイントは、防災と家計に役立つ自立・分散のしくみ、
余市らしさを生かす取り組み、
そして
省エネ・電化+プロジェクト+森の力の“足し算”で、
無理のないペースで前に進むことです。


