泊原発住民説明会に参加して見えたこと──住民の声と北電の答え

地域の話題

泊原発再稼働にあたっての説明会 (余市町)

先日、泊原発の再稼働に向けて開かれた住民説明会(余市町)に参加しました。

午後6時から午後8時までの2時間の予定でしたが、質疑が止まらず30分延長され、それでも時間が足りないほどでした。

会場では、多くの住民から切実な声が寄せられ、北海道電力の担当者が答弁を行いました。
安全対策や使用済み核燃料の処理、避難計画、そして自然エネルギーへの転換など、
私たちの暮らしに直結する問題が次々と提起されました。

今回は、その質疑応答の内容と課題をまとめます。

説明会は10月26日のオンライン配信まで、道内各地で開催されています。
これから参加する方もいると思うので、参考になればと思います。

質疑内容と北電の答え・問題点

会場で出た質疑と北電の答えをまとめます。

核心を突く質疑も多く、
関心と不安の大きさがはっきりと伝わる場となりました。

巨額の安全対策と「原発の危険性」/自然エネルギーはなぜ拡大しないのか

質問
多額の安全対策が必要なのは原発が本質的に危険だからではないか。
自然エネルギーにもっと注力すべき。
使用済み核燃料は今どれだけ溜まり、今後どうするのか。
地震国で「想定外」は許されない。
将来にゴミを残さない電源に転換してほしい。

答弁
北海道は水力が全体の約2割。
太陽光・風力も拡大方針。
2030年に100万kW、2035年に300万kW規模の再エネ開発を目標とする。
一方で天候変動に備え、火力の脱炭素化や原子力を含む「バランス」で安定供給を図る。
使用済み燃料は容量2,820体に対して981体(約40%)。
1〜3号機をすべて運転しても約15年の余裕がある。(15年しか持たない)
最終処分は国の方針に沿って事業者として取り組む。
乾式貯蔵の検討可能性にも言及。

問題点
・最終処分先は未決定のまま。
・「バランス」方針は示されたが、再エネ最優先のロードマップは具体化していない。


原発の環境負荷・コストは「全期間」でどうか

質問
稼働中だけでなく、企画・建設・運転・廃炉までの環境負荷とコストを知りたい。
放射能は何年で無害になるのか。

答弁
ライフサイクル全体のCO₂は19g/kWhで再エネと同程度、火力より小さい。
発電コストは国の審議会試算で他電源と同等水準との認識。
六ヶ所村の再処理工場は遅延しているが数年で竣工計画。
MOXでの利用を進めたい。

問題点
・「再エネと同程度」「他電源と同等」の根拠となる詳細比較がその場では示されていない。
・「何年で無害か」への時系列の具体回答はなかった。


30km圏の同意・説明の扱い/プルサーマル再浮上

質問
政府が安全圏を10km→30kmに拡大。
30km圏の住民にも意思表示の権利があるはず。
プルサーマル(MOX)は六ヶ所村が長年遅延しているのに、どう考えるのか。

答弁
30km拡大は補助金対象の範囲拡大に関するもの。
再稼働における「地元同意」は法定手続きがなく、立地の状況に応じて国(経産大臣)が判断し、北海道と4町村に理解要請がなされた。
30km圏の他市町村に法定の定めはない。
MOXは2010年に設置許可を取得し、新規制基準対応の設置許可もMOX条件だが、現状はウラン燃料で手続き中。
荷揚げ場が整わねばMOXは入れられず、導入時は改めて説明する。

問題点
・避難対象となる30km圏住民への同意プロセスが制度上明確でない。
・MOX導入の前提(手続き・設備)が整っておらず、実施時期や実現性は不透明。


原発は本当に必要か/社員の「現場対応」の覚悟

質問
台湾は原子力を停止した。
北海道でも原発なしでやっていけるのでは。
事故時に現場対応する覚悟はあるのか。

答弁
安定供給・経済効率性・環境適合のバランス上、原子力も必要。
化石燃料高騰時の価格安定にも寄与する。
2050年カーボンニュートラルの観点でも「再エネと原子力の両立」を進める。
社員は全社的に原子力防災訓練を行い、有事には対応する。

問題点
・「原発なしの電源構成」など代替案の具体像は示されていない。


燃料輸送船と防潮堤/港外荷揚げ投資は回収できるのか

質問
輸送船が防潮堤に衝突して壊れるのか。
新たな荷揚げ場の巨額投資は回収できるのか。

答弁
新規制基準の漂流物評価が厳しく、壊れ方の証明が困難なため港外荷揚げ場へ変更。
1〜3号機を再稼働できれば投資回収は可能との考え。
既存プラントも他社再稼働プラントより新しく、長期利用も検討。

問題点
・安全対策の技術的妥当性の説明はあったが、投資回収見通しの前提条件(稼働率等)は示されていない。


ヒューマンエラーと避難計画の実効性/説明会の運営

質問
ヒューマンエラーは必ず起こる。
バス頼みの避難計画は現実的でない。
質問を一人2回に制限して民意を得たと言えるのか。

答弁
復唱・指差呼称・ペアチェック、誤操作防止設計で低減。
避難計画は道と30km圏の13市町で策定済み。
UPZ(30㌔)圏の人数、必要台数、管内バス台数、周辺地域からの応援台数も取りまとめ。
バス業界と協定があり、研修・訓練で実効性を高める。
説明会は全道で迅速に開催するための運営形態。

問題点
・運転手不足・冬季道路状況・渋滞への具体対策の踏み込みは限定的。
・住民合意の形成プロセスに時間・回数の制約がある。


福島事故の経験からの問いかけ

質問
事故は「絶対に起きない」と言えない。
歴史ある地域をなぜ危険にさらすのか。
根本原因を除くには原発をなくすしかないのでは。

答弁
規制基準適合は「合格して終わり」ではなく、安全向上に終わりはない。
国のエネルギー基本計画も「再エネか原子力か」ではなく両方を脱炭素エネルギーとして位置づけている。
福島のような事故を起こさない決意。

問題点
・決意表明はあったが、住民の不安を定量的に下げる具体策の提示は限られた。


原発停止中でも電力は賄えたのでは/石狩湾新港の燃料

質問
原発が止まっていても電力は賄えていた。再稼働は不要では。
石狩湾新港2・3号機の燃料は何か。

答弁
苫小牧の大規模石炭火力があるがCO₂が多い。
砂川は2027年に休止予定。
石狩湾新港はLNGを燃料に、将来的に水素燃焼へ転換する計画。
水力は各地で運用、地熱や陸上風力の調査、太陽光の共同事業も進める。

問題点
・火力の排出問題を指摘しつつ、原発再稼働の必要性を強調。
非原発シナリオの供給力・コスト・排出の比較提示はなかった。


岩内港への汚染水放出はあるのか/人と核は共存できるか

質問
岩内の港に汚染水を流しているのか。
人と核は共存できないのでは。

答弁
トリチウムは水素の同位体で体内蓄積しにくく、放射線エネルギーも小さいため基準が設けられている。
泊からのトリチウム放出は報告しており、量は多くない。
安全向上は継続的に実施。

問題点
・「多くない」という表現で、具体的な放出量・濃度・測定地点等の数値が提示されていない。


回答の抽象性と情報公開

質問
技術的・倫理的な核心に対する答弁が抽象的。
全ての質問に文書で回答し、ホームページで共有してほしい。

答弁
主な質問と回答をホームページに掲載する予定。

問題点
・「主なもの」に限られる見込みで、全件公開の確約はない。


出力抑制と再エネ優先運用/避難訓練の担い手

質問
原発は常に100%運転が前提なのか。
出力を下げて再エネを優先できないのか。
避難訓練は困難者への配慮が不十分。
北電が主体的に避難を担えないか。

答弁
原発は日々の大幅な出力上下を繰り返す設計ではなく、設計条件逸脱の恐れがあるため行わない。
避難訓練は国・自治体の所掌で、学校や福祉施設等も対象に実施・改善している。
当社が独自に避難計画を担う予定はない。

問題点
・再エネ優先の柔軟運用には応じにくい設計上の制約がある。
・避難弱者支援の具体策は自治体側の説明に依存。


原発以外で泊地域が発電する方法は

質問
原発を使わずに発電する方法を示してほしい。

答弁
島国日本は他国から電力輸入ができず、エネルギー安全保障上「バランスの取れた電源構成」が必要。
原子力だけでなく他の電源にも取り組むが、原発も選択肢の一つとして必要と考える。

問題点
・原発ゼロ前提の電源ミックス案(供給力・費用・CO₂・系統対策)の提示はなかった。


再エネへの方向転換は可能か/使用済み燃料の将来

質問
使用済み核燃料の行き先が決まらず危険性は長期に残る。
技術進歩(例:ペロブスカイト太陽電池)を踏まえ、思い切った再エネ転換を。

答弁
社内に再エネ開発部門を設け要員増強中。
水力・地熱・バイオマス等の安定型もあるが、風力・太陽光は変動が大きく、調整力として火力が必要になる。
大電源として原子力を安全を前提に再稼働したい。
再エネ軽視ではない。

問題点
・調整力や蓄電・需要側調整を含む再エネ大量導入時の具体策の説明は限定的。
・使用済み核燃料の長期的出口に新規情報はない。


重大事故時の責任はどこに

質問
新規制基準の認可に従って再稼働した場合、重大事故時の責任は国か、北電か。

答弁
運営・安全管理の責任は北海道電力。
原賠法に基づき1,200億円の保険加入が義務で、超過時は国が支援し、被害者救済を図る枠組み。

問題点
・福島事故の実際の費用規模との乖離が指摘されうるが、枠組みの妥当性に関する議論は深まらなかった。

日本政府(経産省)は2016年、賠償・除染・中間貯蔵・廃炉の合計見積もりを
21.5兆円と公表。


冬季・渋滞時の避難は現実的か/必要台数は

質問
後志の避難路は限られ、冬季の過酷な気象・渋滞・運転手不足の中で本当に避難は可能か。
バスは何台必要か。

答弁
避難経路は複数ルートで設定。
バス業界との協定があり、研修も実施。
被ばく限度1mSv以下等、安全を確保して運行。
冬季や繁忙期の渋滞もシミュレーション済み。
バス輸送能力は、後志4社1,027台、周辺(石狩・胆振・檜山・渡島)53社2,181台を要請可能。

問題点
・実際の運転手確保、降雪時の道路閉塞等、運用上のリスクに対する代替手段の具体像は限定的。
・必要台数と所要時間、住民数との整合の詳細は提示されていない。


MOX燃料の実績と六ヶ所村の進捗

質問
欧州での実績は聞くが、日本では再処理受け入れがなく、六ヶ所村も確立していない。
確立前なのに計画に載せるのか。

答弁
欧州に実績があり、国内でも関西・四国・九州での実績がある。
六ヶ所の再処理はこれからで、進めたい意向。
ただしプルサーマルは許認可と丁寧な説明を経て進めるもので、今すぐ導入する計画があるわけではない。

問題点
・国内サイクルの基盤整備は道半ば。
導入の時期・条件は具体化していない。


地盤隆起が起きた場合、発電は継続できるのか

質問
能登半島地震のように3〜5m規模の隆起が起きたら、泊原発は耐えられるのか。
4m隆起時に発電継続は可能か。

答弁
4m隆起は極めて低いと考えるが、発電継続は難しい可能性がある。
その場合は停止して冷却を維持。
可搬式給水ポンプ車等で対応可能。
何mまで許容かは設計条件との関係で個別評価が必要で、現時点で「発電継続可」とは言えない。
運転準備の判断は規制委等と協議の上で行う。

問題点
・大規模地変時の運転継続性は不確実で、「止めて冷やす」前提での安全確保に重心。
・防潮堤や設備高さの再評価など具体手順は今後の協議に委ねられる。


まとめ──時間を超過しても尽きない疑問

説明会は30分延長してもなお時間が足りず、「主な質問と回答をホームページに掲載」という案内で閉会しました。

質問は1人2問と限られ、回答が不十分であったり、回答内容に疑義を感じて再度質問をしたい場合は、会場全員の質疑が終わってからの2巡目まで待たなくてはなりません。

これで説明を尽くしたと言えるのでしょうか…。

全体を通じ、北電は「再エネと原子力の両立」「バランス」「安全向上の継続」を繰り返し説明。

一方で、使用済み核燃料の出口、避難計画の実効性、非原発シナリオの提示、重大事故時の賠償枠組みの妥当性などでは、さらに具体的な情報が求められる状況です。

これから参加される方もいると思うので、詳細にまとめました。
全体の文字起こしもしましたので、全文が欲しい方はご連絡くださればと思います。

ぜひ足を運んで、意見を伝えましょう!