余市町2025年参議院選挙総括 

選挙

はじめに

2025年7月に行われた第27回参議院議員通常選挙は、全国58.50%の投票率を記録し、18年ぶりの高水準となりました。

余市町でも56.37%の投票率となり、前回の衆議院選挙より幾分下回りましたが、以前として高水準です。

少し遅くなりましたが参議院選挙の総括、そしてまたデジタルメディアがもたらした影響について、深掘りしてみます。


余市町の投票率動向と男女差

全国平均余市町差異(余市-全国)
投票率全体58.50%56.37%–2.13pt
投票率(男性)57.59%
投票率(女性)55.33%
  • 全体として
    全国58.50%に対し余市町は56.37%とやや及ばなかったものの、過去の参院選と比較すれば高水準を維持しています。
  • 男女差
    男女の投票率は、男性57.59%、女性55.33%と約2.3ポイントの差となっています。
    しかし投票者数は、男性3,982名、女性4,420名と女性の方が多くなっています。
    選挙当日の有権者数は、男性6,827名、女性7,989名と、1,162名もの差が…。

余市町はこんなに女性の方が多いんですね。


余市町における政党支持の動き

選挙区(北海道選挙区)

政党・候補者得票数順位
自民党/高橋はるみ氏2,0591位
立憲民主党/勝部けんじ氏1,7872位
自民党/岩本剛人氏1,1583位
国民民主党/鈴木まさき氏8874位
参政党/田中よしひと氏8605位

比例代表

政党得票数
自由民主党2,375 (2,826)
立憲民主党1,615.8 (2,444)
公明党794.9 (1,032)
国民民主744 (403)
参政党700 (139)
れいわ新選組581 (500)
日本共産党496 (657)

( )内の数字は、昨年(2024)の衆議院選挙の時の、各政党比例得票数です。


新興・参政党や国民民主党などが躍進した流れは余市町でも後押しされる形となり、無視できない票を獲得しました。
今後の地域政治の状況にも変化を投じるものであったと思います。


デジタルメディアが切り拓く選挙戦の光と影

参議院選を通じ、デジタルプラットフォームは間違いなく“選挙の主戦場”へと変貌を遂げました。
しかしその一方で、情報過多や誤情報の氾濫など、解決すべき課題が浮き彫りになっています。

短尺動画のメリットとデメリット
政策や演説の一部を切り取り、手軽に視聴できる“切り抜き動画”は、若年層を中心に瞬く間に拡散。
広告収益を目的に“過激編集”を施す制作者も現れ、発言の意図をゆがめるリスクをはらんでいます。

ライブ配信の手軽さと責任
候補者本人や支援者がSNSでライブ配信を行い、双方向コミュニケーションを実現。
即時性は魅力ですが、誤発言の拡散や一部視聴者によるコメント荒らしが後を絶たず、プラットフォームのガイドライン整備が急務です

AI活用の期待と危機感
有権者データ解析やチャットボットによる政策説明など、AIは選挙運動の高度化をサポートする上で今後欠かせないツールとなるでしょう。
しかしディープフェイクをはじめとする「AI悪用」の可能性も無視できません。
情報の真偽を見極めるメディアリテラシー教育と、プラットフォーマーの監視体制強化が喫緊の課題です。

問題提起として…

  • 切り抜き動画の“収益性”が、情報の質よりも再生数を優先させる動機を生む結果となる。
  • AI技術の進化が支持者獲得に貢献する一方で、フェイクを見破る手段は追いついていない。

フィルターバブル・エコーチェンバー

フィルターバブルエコーチェンバーという言葉を聞いたことはありますか?
選挙のみならずこれからの時代、ここら辺をよく理解しておくことは重要だ思います。

フィルターバブル

動画サイトやSNSが過去の視聴履歴や「いいね」の履歴をもとに、あなた好みの動画や投稿を次々に表示してくれます。

しかしその結果、同じような情報ばかりが優先され、多様な視点や異なる意見が届きにくくなるのがフィルターバブルです。

自分はインターネットやSNSで多様な情報を収集しているつもりでいても、知らず知らずのうちに“自分と似た考えばかり”を追いかけてしまうというものです。

フィルターバブルは、まるで「フィルターのかかった風船」の中にいるようなものです。
風船の内側には、あなたのこれまでの好みや行動に合った情報しか入ってこず、外の多様な意見や新しい視点は遮断されてしまいます。

透明な風船に閉じ込められているため、自分では気づきにくいのが特徴です。
重要な議論の一端を見落とす可能性が高くなります。

エコーチェンバー

同じ意見や価値観がオンライン上で繰り返し強化され、まるで“反対の声が聞こえない部屋”にいるような状態を指します。

SNSで頻繁に意見交換を行うコミュニティほど、その中だけで意見が行き来し、外の視点が遮断されがちです。

結果として、偏った考えがさらに強固になり、異なる立場の有権者との共感や対話が難しくなってしまいます。

<なぜ危険か>

  • 一方向の情報に依存すると、候補者や政策の本質を見抜く目が鈍る
  • 自分とは異なる意見に触れる機会が減り、対話や議論の質が下がる
  • 偏った情報が誤情報やデマと結びつきやすくなる

今回の選挙戦のあと、専門家が、TVなどのマスメディアでこの危険性について解説していました。
若者が投票に行くという行動を喚起したという点で、SNSは大きな役割を果たしたのだと思います。

しかし一方、その投票先を選択するまでの過程で、各政党や候補の主張を幅広く探ってみたのでしょうか?
広告収益を目的とした過激な編集やタイトル、ディープフェイクを見抜くことはできていたのでしょうか?

デジタル時代の選挙戦は、従来の規制や常識だけではコントロールできない複雑さを帯びています。
ここを見極める力が有権者に求められるのだと思います。


おわりに:未来を拓く一票

2025年参議院選挙は、“誰もが情報発信者・受信者”となるデジタル社会の矛盾と可能性をあわせ持つ選挙でした。

  • デジタルメディアは選挙参加の門戸を広げた反面、誤情報への備えを急務としました。
  • 新興政党の支持拡大は、有権者の意識変化を如実に示すものとなりました。

余市町の投票結果もSNSの影響を受け、時代の変化のうねりの中にいるような、大きな節目を予兆させるものであったと思います。