「余市町営斎場の建替計画」その経過とこれから

議会

「余市町営斎場の建替事業」について、これまでの経過報告書がまとめられましたので、その内容をできるだけわかりやすく整理してお伝えします。

昭和48年に供用を開始した現在の斎場は、老朽化や設備の狭さといった課題を抱えており、町としても早期の整備が求められてきました。

当初の「現在の斎場の敷地内に建設する」という計画は、法面崩壊や地滑り発生により中断。

その後、新たな候補地として挙がった「都市公園予定地」では、地域住民の皆さんからの強い反対の声が上がり、町内に混乱が広がる事態となりました。

この過程において、町民の皆さんへの丁寧な説明など、合意形成の手順に課題があったと考えています。

ようやく新たな候補地での計画が動き出しましたが、今後の事業推進にあたっては、町民の理解と納得が得られる丁寧な進め方が、これまで以上に求められます。

余市町営斎場立替事業の経過まとめ(平成28年度 〜 令和6年度)

事業の背景と基本計画(平成28年度)

昭和48年に供用開始された余市町営斎場は、火葬炉や建物の老朽化が進み、維持管理費の増加や、待合室や駐車場の狭さといった課題を抱えていました。

こうした状況を受けて、町は平成28年4月から12月にかけて、新たな斎場建設に向けた基本計画策定業務に着手しました。

この基本計画では、現有敷地2,466㎡に造成予定地1,326㎡を加えた合計3,792㎡で計画。
鉄筋コンクリート造の平屋建て、延床面積約1,220㎡の施設が構想されました。

火葬炉は3基を設置予定とし、アクセス改善のため幅員8mの新設道路も計画されていました。

基本設計・実施設計(平成29年度)

平成29年4月から平成30年1月にかけて、基本設計と実施設計が進められました。

道路の勾配を緩やかにするための新設道路を整備するものとし、そのため敷地面積が狭くなったことから、当初の平屋建てから二階建てへと計画が変更。

施設構成としては、告別、火葬、待合、管理の各ゾーンを一体化した建物とし、1階部分が1,040.92㎡、2階部分が132.08㎡、合計1,173.00㎡と計画されました。

町政懇談会では、町民の皆さんに向けた説明も行われ、火葬待ち時間や待合室の広さ、テーブル席や小上がりの配置など、具体的な内容が共有されました。

工事開始と法面崩落(平成30年度)

平成30年に入り、造成工事が本格的に始まりましたが、6月に2工区と1工区において法面崩落が発生しました。

これを受け、設計内容を見直し、ボーリング調査を実施した上で、法面の勾配を緩やかにするなどの計画に変更。

工事再開と地すべり(令和元年度)

再開された工事の中で、令和元年5月に梅川霊園内で墓石の傾きや亀裂が確認されました。

調査の結果、地すべり (山全体がズレている) の可能性が高いと判断され、同年内に工事が中止され、翌年2月には施工業者との契約も解除されました。

梅川霊園の地すべり対策(令和2〜3年度)

梅川霊園の安定化を目的に、令和2年度には調査・設計を実施し、令和3年度には恒久的な対策工事が行われました。

これにより、一定の安全性は確保されました。
(工事を再開した場合、保証はない!)

建設適地の再検討(令和3〜4年度)

当初の計画地の継続利用が困難となったことから、町は外部コンサルタントによる適地選定業務を依頼し、町内7か所の候補地を比較検討しました。

その結果、「都市公園予定地」「旧栄小学校跡地」が有力な候補とされました。

町民説明会も2回開催され、「町営斎場建替事業適地検討委員会」が設置されました。

この委員会では計5回にわたる会合が開かれ、結果として「都市公園予定地」を第一候補とする方針がまとめられました。

私も検討委員会を傍聴させて頂きましたが、全体が納得した結果とはいえません。
最後まで混乱していましたし、「都市公園予定地は反対!」という意見は強くありました。

検討委員会から町への答申内容を見ても、それが強く伝わります。

これを受けて町は、広報1月号で「町長のコラム」として都市公演予定地の調査を進めることを発表します。

議会の民生教育常任委員会への最終的な報告は12月27日。
…了承するもしないも、すでに刷り上がっているのでは?という状況です。

敵地検討委員会の答申はこちら⬇️

町営斎場建替事業適地検討委員会からの報告

(1) 新斎場について

  • 斎場の建替えは、早期に行うべき。

(2) 候補地について

  • 適地を現計画地(梅川)と都市公園予定地に絞ったが、これらの候補地には様々な課題がある。
  • 現斎場での建替えは技術的に不可能ではないが、工期及び予算が大幅に超過することが見込まれる。
  • 都市公園予定地は、津波・洪水などの防災対策、元々ごみ捨て場だったこと、居住地に近いことなどの懸念がある。
  • いずれの候補地でも事業を進めるためには、住民の理解と合意を得る取組が必要である。

(3) その他

  • 本検討委員会を再編成し、継続開催することを希望する。
  • 本検討委員会は、2回開催された町民説明会を受けて設置されているので、検討結果を町民に報告することを希望する。
  • 7か所のうちの3か所の民有地及び他の可能性のある民有地について、町有地同等に確認を希望する。
  • 斎場に公園を併設し、将来地域の文化施設となるよう希望する。
  • 今後の公共施設の計画においては、町民の意見を十分に反映させることを希望する。

都市公園予定地の調査と断念(令和5年度)

その後実施された地質調査の結果、「都市公園予定地」には廃棄物層が確認され、大規模な処理が必要であることが判明しました。

これにより、多額の費用がかかることが明らかとなり、町はこの候補地での建設を断念しました。

設計業務に関する調停申立てとその結果(令和4年度~令和6年度)

町営斎場の建替工事において、令和元年5月20日、梅川霊園の切土工事中に地すべりが発生し、工事が中断されました。
その後、施工業者との契約は令和2年2月29日付で解除されました。

この地すべり事故について、町としては、基本・実施設計業務の内容に問題(瑕疵かし)があったとの見解を持ち、設計業務を受託した会社と協議を重ねてきました。

しかし、互いの意見の相違が解消されなかったため、最終的には司法の場での調停手続きに移ることとなり、令和4年11月2日に札幌簡易裁判所へ調停を申し立てました。

🕒 成立までの主な経過

  • 令和4年11月2日:札幌簡易裁判所にて調停を申立て
  • 令和4年12月6日:第1回調停を開催。その後、計15回にわたる調停が行われ、町と設計業者側の主張や証拠書類が調停委員会にて慎重に確認された
  • 令和6年11月26日:第14回調停において、町側・相手方双方に対して解決案(1,456万7,140円の支払い)が提示され、双方が受諾の意向を表明
  • 令和7年1月14日:第15回調停にて、正式に調停が成立。相手方より町へ、期日(令和7年2月28日)までに解決金が支払われることとなった

🔍 調停委員会による見解(概要)

  1. 切土勾配の設計瑕疵と法面崩落との因果関係
    設計者が設定した切土勾配が原因となって法面崩落が発生したと認められ、設計業務には瑕疵があったと判断されました。
    ただし、町側も地盤の状況を十分に把握していなかったことから、8割の過失相殺が妥当とされました。
  2. 切土勾配と地すべり(霊園被害)との相当因果関係と損害論
    霊園の地盤はもともと軟弱で地下水も多く、地すべりが起きる条件が重なっていたと考えられました。
    そのため、「切土勾配による被害」との直接的な因果関係は限定的とされ、霊園の被害に対する責任は設計者側に全面的には認められませんでした。

💰 損害額と解決金の算出

項目金額
請求額3億1,925万6,120円
損害額7,283万5,704円
解決金1,456万7,140円

この調停結果は、設計段階での地盤調査や安全確認が不十分であったこと、また契約業務においてリスク管理が甘かったことを強く示すものです。

結果として、町は多額の事業費を投じながらも、最終的にはそのごく一部しか補償されないという、非常に重い現実を突きつけられました。

行政としての責任の重さは小さくありません。

新候補地での基本計画(令和6年度)

新たな候補地として、梅川町556番地1外の土地が選定されました。
この土地について、測量や地質調査を行い、基本計画が改めて策定されました。

  • 敷地面積:約5,000〜6,000㎡
  • 建物延床面積:約1,300㎡
  • 切土勾配:1:1.5(湧水への対応に注意が必要)
  • 整備スケジュール:
  • 設計業務:令和7〜8年度
  • 用地買収:令和7年度
  • 建設工事:令和9〜10年度
  • 解体・供用開始:令和11年度
  • 事業費:概算で約18億3,000万円

今後の進め方と課題

今回の斎場立替事業を振り返ると、土地の状況を十分に把握せずに事業が進められたことや、住民合意を得るまでの説明や対応に課題があったことが浮き彫りになりました。

今後は、住民の理解を得る丁寧な説明と情報公開、関係部門との連携体制の強化、計画段階での地盤調査や安全対策の徹底など、慎重な対応が不可欠です。

町としても、過去の経過をしっかりと踏まえたうえで、再び同じ過ちを繰り返さないよう取り組んでいくことが求められます。